出会い~1脚の椅子
弟宅がある追分は、軽井沢町の中でも外れにあるためか、とても静かで落ち着いたところ。観光客などに出くわすことは、ほとんどありません。それでも、緑豊かな林道沿いには別荘がポツンポツンと建ち並び、軽井沢らしさが感じられます。この地区は、定住されて文筆を生業とされている方が多いとも聞きました。
母が弟宅で過ごしていた期間、日課にしていた午前中のひとり散歩をしていたときのこと。まさに片づけの真っ最中と思われる1軒の家の前を通りかかったそうです。外に運び出された家具に目をやっていると、母に気づいたのか、中から同世代ぐらいのご婦人が出てこられたのだとか。
間もなくこの追分の家を離れ、体がご不自由になったご主人と共に介護が受けられる施設へ行かれるというご事情。お話を伺いながら、ふと整理されてゆく家具が気になった母。趣のある家具ばかりなのに処分してしまうのかしら…と。そんな母の心中を察したのか「もしよかったら、是非使っていただきたい。」と、仰ってくださったそうです。
とは言え、散歩中だし、その時点では居候の身だし…。考えたすえ、そのご婦人が50年もの間座り続けたという思いの詰まったラタンの椅子を1脚だけ頂くことに。ヨイショヨイショと抱えて弟宅へ帰ったそうです。
↑こうして仲間入りした椅子。古いものには古いものがよく似合う…アンティークのバタフライテーブルとの相性もなかなかです。
↑さすがに50年、あちらこちらの籐が傷み、ほどけていたので、応急的に革ひもを巻いてみました。
これから、この椅子に腰かけるたび追分での出会いを思い出し、大事に使うことで息災にお過ごしであることを願っていくでしょう。
0コメント